Monday, November 30, 2009

香水と肌の関係

Areziaは、ファッション関連のテレビや雑誌のインタビュアーをしている。私もミラコレのバックステージで撮影する事も多いので、そこで頻繁に会う。有名なモデルなどがいたら、同業者同士で譲り合いながら、仕事をこなして行く。
写真を撮る事になり、Areziaが家に招いてくれた。部屋の一角には、たくさんの香水が並んでいた。ボトルがオシャレな有名ファッションブランドの香水 だけでなく、カトリックの修道院が精製した伝統的な香水や、ハーブ屋などで売っているシンプルな香水もあった。香水を集めるのが趣味なのではない。自分に 似合う香水を探しているうちに集まってしまったのだそうだ。
アダムとイブがエデンの楽園を追われて以来、私たちは「裸の自分が恥ずかしい」と思うようになった。Areziaは、「香水をしないで人と会うなんて信じられない」と言う。香水とは、肌から最も近い羞恥心の現れなのだ。

[ファッションブランドの香水だけでなく、修道院が精製する香水や、ハーブ屋のシンプルな香水もあった]

脈打つごとに揮発する香り

香水にはFirst Note、Second Note、Third Noteがあると言うことも、Areziaが教えてくれた。
First Noteとは、つけてすぐに感じる第一印象の香りのこと。香水をつけたときに、気分転換になったり気付けの意味があるそうだ。朝だったら、今日一日頑張ろ う、とか。夕方のお出かけの前なら、気分を昂揚させてくれるような役割がある。ただ、香水を選ぶ時、このFirst Noteにだまされてはいけないのだそうだ。なぜなら、それは10分程のつかの間の恍惚のための香りで、すぐに消えてゆくからだ。
Second Noteとは、つけてから30分後くらいに香る香水本来の香り。香水を選ぶときは、この香りを一応の基準にすると良いらしい。
Third Noteとは、肌に暖められた香水が発する香りの事。最後まで引っ張って長く残る香り。肌と一体となって、それは世界でひとつしかない独特の香りとなる。 実際に香水が香っている時間のほとんどは、このThird Noteとなる。肌の温度や湿度、皮脂量や体の酸度などによっても香水の香り方が変わるという。
そして、手首や首すじにつけると効率がよく香る。なぜなら、静脈が近いせいで、温度が体の他の部分よりも高い からだ。脈が打つたびに香りが空気中に揮発するというわけだ。私の香水に関する知識のすべてはAreziaからの受け売り。「自分で自分の香水の香りが気 になるようでは、その香水は肌に合っていない」というサインなのだそうだ。

[Areziaのヌード]

Third Noteと肌がなじみ、世界でひとつの香りとなる

ヌード撮影はモデルとフォトグラファーの美への挑戦であり、真剣勝負である。決して優雅なものではない。Areziaのヌードを撮っていると、彼女も汗ばんでくる。香水のThird Noteと彼女の肌がなじんで、世界でひとつしかない香りとなる。
マリリンモンローを思い出した。「ベッドでは何を着ているのですか?」と質問したジャーナリストがいたそうだ。「もちろん、Chanel No.5よ」と答えたのは有名な話だ。 
一糸まとわぬ姿になった時でも、香水だけはまとっている。それは、恥じらいを女のプライドに高めてしまっている行為とも言えよう。

Areziaが奇麗な体を惜しげもなく見せてくれるのは、彼女がキチンと香水をつけている女性だからだろう。香水をつけている限り、裸ではないのだ。「カメラの前で服を脱ぐことよりも、服を着ていても香水をつけないで外に出かけることの方が恥ずかしい」と彼女は言う。
総じてヨーロッパの女性が肌を見せることに抵抗がないのは、ここの香水文化のせいなのかもしれない。この季節、街中でも夏服からは日焼けした素肌が覗いている。しかし、それは素肌に見えるだけ。実は彼女たちは、キチンと“香りをまとっている”のだ。

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