Thursday, January 13, 2011

Facebook(フェイスブック)の仕業


ソーシャルネットワーク 
私の住むイタリアでは、若い世代を中心にEメールだけでなく、Facebook内で、カジュアルにやり取りするのも日常化してきている。Facebookとは、いわゆる「SNS」(ソーシャルネットワークサービス)の事。自分自身の顔写真をページに貼り、実名で登録する。友人などのつながりを広げ、情報をネットワークで共有したり、自分の旅や日常の写真をアップして自分が主役のアルバムなどを作って行く。世界的には、ユーザーが5億人を超え、Googleよりもページビューが多い世界一のサイトとなった。
日本にも「Mixi」というSNSがある。匿名の登録が多いのが日本的特徴であり、そこがFacebookとの最大の違いと言えるかもしれない。 

時代遅れの肖像権
初めてその存在を知ったのは数年前で、大学院生のAnnaに招かれて行ったパーティーでの折だった。
知り合う若者たちが、「私もFacebookに登録しているから、友人申請してくれる?」と口々に私に言ってきた。戸惑う私を見て、「私はAnnaの友人だから、彼女のページの友人欄に行けば簡単に私の顔写真をみつけられるはず!」と丁寧に説明してくれた。確かに、パーティーでおっちら携帯電話の番号を交換するよりも、コミュニケーションはよっぽど洗練されている。そして、パーティーの数日後 には、みんな自分のデジカメで撮ったパーティー写真をFacebookにアップしていた。
写真の画像内にカーソルを動かして、誰かの顔の所に照準をあてるとその人の名前がでてくるようにセットアップ することもできる。そうやって写真の交換をし合い、膨大な写真日記のアーカイブがある若者も少なくない。パーティー写真をブラウズして行くだけで、友人の友人などの名前なども自然に頭に入っていく。
当然、私の顔写真が知らないうちにアップされていることもある。しかし、肖像権などを問題にする空気はまるでない。そんなことを心配していると、ネット社会に馴染めぬオジサン扱いにされてしまう様な勢いだ。フォトグラファーである私にとって、著作権や肖像権の問題は常に尊重すべきものではあるのだが、インターネットメディアの発展で、著作権や肖像権に対する意識はより曖昧になってきている。気にする方が時代遅れなのかもしれない。
そうした無政府状態で作り上げたネットワークが、お互いに次のイベントの招待状の送り先になっていく。「インターネットという仮想空間」と「現実に触れ合えるイベント」がうまくリンクしているのだ。 

汗を流して熱唱するマリオのライブ。CDでは味わえない迫力。
http://www.netherfall.com/  

Facebookの仕業
ミラノのあるEnoteca(ワインバー)で、細々とやっていたワインのテイスティングの会が、ある日突然、若者で溢れかえったという話を聞いた。 Facebookで「ただ酒が飲める!!!」という情報が流れた結果なのだそうだ。
私も実際に、工業デザイナーの新作発表会や前衛アートの画廊のオープニングに、いつになく若者が溢れかえっているのを何度か見た。あるイベントで、予想外に大勢の若者がやってきたとすれば、ミラノではまずFacebookの仕業と思って間違いない。
ミラノ在住のアメリカ人の歌手のMarioは、そんなFacebookを使いこなしているひとりだ。3年前くらいから、ディスコでのパーティーや自分のライブコンサートなどを催している。最初は二十人くらいしか客しかいないときもあった。エクスクルーシブな特権的な雰囲気があり、それはそれで クールな感じだったのだが、Facebookの噂で、数ヶ月もしないうちに何百人もの若者が出入りする様になった。
Marioと彼の友人たち(そしてそのまた友人たち)が企画したハロウイーンパーティに招かれた事もあった。いつも通り、招待状はFacebookを通して送られてきた。
イタリアでは11月1日は「諸聖人の日」で祝日。翌日の2日は「死者の日」で、菊をもってお墓参りに行く日とされる。日本のお盆のようなものだ。ハロウィンはそれらの前夜祭にあたるのだが、そもそもイタリアではそれほど馴染みのあるイベントではない。元々はケル ト民族、今ではアングロサクソンのお祭りで、日本と同じ様にアメリカ人の若者などによって持ち込まれたお祭りなのだ。
とにかく、ハロウィンナイトでは、飲んで踊って精霊や魔女が人間界を訪れる日を祝った。そしてみんなで写真を撮り合って、その写真は即日ネット上にアップされた。時代は疾走している。 

 
ミラノの街には、オシャレなヴァンパイアーがよく似合う

マドンナの英断  
ふと、マドンナのことを思い出した。マドンナは数年前、デビュー以来25年に渡るパートナーだったレコード会社との契約を更新せずに、イベント会社との契約を交した。活動の軸足をCD販売からコンサートに移したと言っても良い。ハッキリいって、今やマドンナの新曲を買わずして手に入れるのは至極簡単である。インターネットとデジタルテクノロジーの進化によって、簡単に完璧なコピーが手に入る時代だ。
もうすでに、マドンナサイドとしては、著作権がどうのこうの細かく吠えるつもりはないのだろう。今まではCDの販売促進のためにコンサートをしていたが、これからはその逆を行く。つまり、CDやその違法コピーは、コンサートに来てもらうための宣伝材料にしてしまうという逆転の発想だ。U2なども、このビジネスモデルを追随している。そして、ミュージックビジネスで今最も成功しているのが、すでに、このモデルだと言う。

「インターネットという仮想空間」と「現実に触れ合えるイベント」、この2つをうまく組み合わせて行くのが今後のテーマになっていくのかもしれない。確かに、汗流して熱唱する歌手を、実際に目の前でみた方がよっぽど楽しい。生のヴァイブレーションの迫力は、 CDやDVDには適わないのだから。